「染司よしおか」五代目当主・吉岡幸雄氏が選んだ今月の色の過去の記事より、人気のエッセイを紹介しています。
梅の色
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源氏物語で紅梅の襲がでてくる場面のひとつに、「梅枝」があります。
それは、光源氏が三十九歳の春のこと。宮中での権勢をきわめて、ひとり娘の明石の姫君の裳着(成人式)と、それにつづいて東宮への入内の儀がすすめられる帖です。
如月(二月)の十日、紅梅の盛りに、光源氏を弟の兵部卿が訪ねてきます。
そのおり、かつて光源氏が想いをよせていた朝顔の前斎院より、娘への祝いの品が届けられます。その手紙には白梅の散った枝が添えられています。白梅は紅梅より早く咲き早く散りますので、その枝が添えられているところに、みごとな季節感があるのです。
光源氏は、そのお礼に、「紅梅襲の唐の細長添へたる」装束を、前庭の紅梅の花とともに贈るのです。
「時にあいたる」、すなわち、季節にあった装いや振る舞いをすることが、平安朝の貴人たちの美意識の根源です。この「時にあいたる」ということが、源氏物語の大きなテーマであるといっていいのです。
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紫紅社刊『王朝のかさね色辞典』より、植物染めによる「梅の色」を壁紙にしました (染色: 染司よしおか)。
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