日本の色の十二カ月
古代色の歴史とよしおか工房の仕事
吉岡 幸雄 著
日本の色の十二カ月
「四川省の紅花が東大寺二月堂に映える」より
花をみてもわかるように紅花は小さな花びら一枚一枚に黄と赤の色素を含んでいる。私のように染色する立場からは、赤ができるだけ多く、黄味の少ないものをよしとする。
私の工房で一日に染める量は、四キロほどで、まず紅花の散花をザルにあげて手で押して水を着る。すると、ザルからは黄色の色素、専門的にいうとサフロールイエローが流れていく。
かつて山形あたりでは、この黄色で子供の産着を染めたそうで、血液の循環がよくなるからであろう。
また出雲では子供が産まれたら木綿の藍染めの湯あげを嫁の里からお祝いとして届ける習わしがある。その片隅に白い部分を残して、紅花で染めておく。その部分で赤ん坊の眼を拭いてやると目脂がたまらないといわれるからである。
ともあれ、したたるような紅色がほしいのでどんどんと押し絞って黄色を捨てる。絞った花にまた水を入れてかき回して、さらに黄色を流す。冷たい水のなかに手を入れて、そしてザルに上げて絞る。朝早くからの作業で手はかじかんでくるし、ときどき紅花の棘が残っていててに刺さることもある。
しかし、紅花に触れているとやがて血行がよくなってきて、手をぬぐうと温かく感じるようになる。水に浸けても黄色い色素が出なくなると、もう一度絞り上げて桶に入れる。ここからが赤色を採る作業である。
続きは、『日本の色の十二ヶ月』(吉岡幸雄著) にてどうぞ。
2月カレンダー付き壁紙
菊池寛賞受賞記念 吉岡幸雄「日本の色 千年の彩展」 (撮影: 岡田克敏) より、染司よしおか植物染作品の東大寺修二会 (お水取り) 椿の造り花を壁紙にしました。
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